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JAHIは、超高齢社会における健康寿命延伸とヘルスケア産業育成の実現を目指す、ヘルスケアに関する有識者、産業、関係者が集まった民間唯一の団体です。

感染症予防は健康づくりから③頼れるヘルスケア産業を醸成する

在宅感染症予防は薬剤師の仕事

――ヘルスケア産業において、在宅感染症予防はどの程度インパクトのあるテーマなのでしょうか?

小原:ヘルスケア産業における在宅感染症予防はとても大きなテーマだと、やればやるほど感じています。部会長を引き受けた当初は、単純にインフルエンザやノロ・ロタウイルス対策の啓発をやればいいと思っていました。手洗いの歌を普及するような感じかなと。でも、在宅感染症予防を知れば知るほど、これは薬局で行う仕事だなと思うようになりました。

――なぜそう思われたのでしょうか?

小原:まず、薬剤師法には薬剤師の任務として「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する」とあります。つまり医療職の中で、公衆衛生全般を担うことが法律で定められています。そこから考えても在宅感染症予防は大事なことですし、薬剤師は医療職のなかでも唯一、「モノとその情報の提供」が出来る仕事です。在宅感染症予防に必要な商品を多角的に取り扱い、啓発していく医療職としては薬剤師がベストなのです。

――在宅感染症予防とドラッグストアの関係についてはどうでしょうか。

小原:在宅感染症予防はドラッグストアに来るお客様全員にかかわる大事なテーマです。これをドラッグストアのテーマとして掲げることは、他のスーパーや類似店との大きな差別化になります。実際にスーパーで衛生用品が売っていても、どれを買えばいいか迷いますよね。その点、ドラッグストアであれば専門職がおりますので、気軽に自分や家族の体調を相談することができます。それが在宅感染症予防とドラッグストアの親和性の高さだと思います。

――地域におけるドラッグストアの役割についてもお聞かせください。

小原:ドラッグストアは健康支援のステーション的な役割を果たすべきだと思っています。病気がちの人がすべて医療機関に行けば、それこそ社会的な負担は膨大になります。身近で気軽に、しかも安価に医療相談や体調に合わせた商品を購入できるということは、これからの高齢社会では欠くことのできない有効な社会システムだと思っています。地域住民が健康に不安を抱えた時の最初の相談窓口として機能し、医療機関とも協力して地域住民の健康を守るとともに、社会経済を回す原動力にもなりたいです。地域の方々から「あのドラッグストアに行けば間違いないよね」と思っていただき、信頼を得られれば、その店のスタッフが育ちます。そういった良い社会循環を作っていくことで、ヘルスケア産業全体が信頼されるようになっていく。その流れをドラッグストアがつくっていきたいと思います。

感染を予防するには健康の維持が重要

――今後、小原先生はどのようなことに取り組んでいきたいですか?

小原:介護などのお困りごとに対して「こんな商品が適していますよ」というアドバイスを表示するアプリを日本ヘルスケア協会で開発したいです。特に高齢者の感染症予防においてフレイル※予防は欠かせません。ドラッグストアが提供している商品は付加価値が高いので、適切な商品が届けられると思います。

※フレイル=加齢とともに心身の活力が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態。適切な介入・支援により生活機能の維持向上が可能。

――例えば、どのような商品があるのでしょうか。

小原:ウエルシアと大妻女子大学家政学部食物学科の川口美喜子教授が共同で開発したレトルト食品「笑顔で一杯 やわらかい美味しさ」シリーズは、まさに食を通じたフレイル予防を狙った商品です。見た目は普通のお惣菜ですが、口に入れるととろけるように柔らかく、1食分のタンパク質をある程度補えるように工夫しています。噛む・飲み込む力が低下した高齢者には、ミキサーにかけてペースト状にした食事が提供されることもありますが、原形をとどめず、色が悪くなってしまうので、食べる楽しみが失われていきます。この商品では、本来の食品の形を変えないままで柔らかく仕上げていますので、食事の喜びを感じながら、しっかり栄養を摂っていただけます。

――現場を知っているからこそ、このような商品が開発できるのですね。

小原:はい。介護の専門職とメーカーの開発者が意見交換する場も設けています。日本ヘルスケア学会年次大会やドラッグストアショーなどで、在宅感染症予防部会とドラッグストア在宅介護推進部会で合同セミナーを開催しています。各メーカーに感染予防の商品をプレゼンして頂き、ヘルパーやケアマネジャーから現場の忌憚なき意見を聞くというもので、これはかなり好評です。「おむつのパッケージの持ち手が上部にあると手が届かないから、横に付けてほしい」とか、メーカーにとっては目から鱗の意見が聞けるとあって、毎回沢山の方が聞きに来て下さいます。

――最後に、一般の方へのメッセージをお願いします。

小原:手洗いや歯磨き、フットケアなどの日常の感染予防はもちろん必要です。しかし、年齢とともに免疫力が低下し、食事量の減少、栄養の吸収率の低下、臓器の機能低下などの変化が起こってきます。そのため、感染症予防のためには自分の健康を維持することが最も大切なことです。ぜひ、年齢に合った身体のメンテナンス方法を知って、実行してください。お近くのドラッグストアにお越しいただいて、薬剤師、登録販売者、管理栄養士など専門職と話をしながら、自分に合った健康方法をチョイスしていただければと思います。

【聞き手・まとめ:田中留奈(伝わるメディカル)、企画・製作:株式会社リッチメディア】