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JAHIは、超高齢社会における健康寿命延伸とヘルスケア産業育成の実現を目指す、ヘルスケアに関する有識者、産業、関係者が集まった民間唯一の団体です。

感染症予防は健康づくりから①知識を楽しく普及させたい

日本ヘルスケア協会は、ヘルスケア産業育成などを通じて健康寿命の延伸と国民の幸福に寄与することを目指す団体で、業界やテーマ別に部会が設置されています。今回は「在宅感染症予防部会」の部会長を務める小原道子先生(ウエルシアHD株式会社 会長付地域連携推進担当部長)に、当部会の活動について詳しくお話を伺いました(全3回)。


<略歴>
小原道子(おばら・みちこ)
東北薬科大学(現東北医科薬科大学)薬学部薬学科を卒業後、仙台赤十字病院薬剤部に入局。1993年より一迫薬局に所属し、訪問薬剤師として3町1村の訪問診療に同行し訪問薬剤管理業務に携わる。2009年よりウエルシア関東(現ウエルシア薬局)株式会社に在籍し、現職はウエルシアHD株式会社 会長付地域連携推進担当部長。岐阜薬科大学の特任教授、岐阜大学医学部附属病院の非常勤講師、東京薬科大学の客員教授、日本ヘルスケア協会理事も務める。

LINEスタンプ「ざいたくま」をリリース

――日本ヘルスケア協会の在宅感染症予防部会は、2019年3月に「ざいたくま」というキャラクターのLINEスタンプを作ったと発表しました(詳しくはこちら)。

小原:「ざいたくま」は、在宅ケアの安心・安全を願って生まれたクマさんファミリー(クマ太、クマ子、クマ郎、クマ美)のキャラクターで、感染症予防の意識付けツールとして制作しました。LINEのスタンプストアで販売しています。

――なぜ「ざいたくま」をLINEスタンプにしたのですか?

小原:LINEスタンプにしたきっかけは、監修いただいた石垣泰則先生(医療法人社団悠輝会コーラルクリニック理事長)が「例えば神経難病などで文章を継続して打つことが大変な方でも、スタンプは気軽に意思疎通ができ、コミュニケーションの手段としていいよね」とおっしゃったことでした。難病の人に限らず、在宅でケアを受けている高齢者の方にとっても、LINEを送ると既読が分かるから、見守りになりますよね。「それなら、感染症予防としてやってほしいこと、気を付けてほしいことをスタンプにして送ったらどうだろう?」「病院や介護スタッフからかわいいスタンプが届いたら、ちょっと癒されるんじゃない?」このように発想して検討を重ね「ざいたくま」スタンプは生まれました。

在宅での感染予防を楽しく普及させたい

――「ざいたくま」を生み出した在宅感染症予防部会の目的をお聞かせください。

小原:当部会の目的は「要支援・要介護者と家族を感染から守るために必要な知識と対策の普及」です。昔は大家族だったので、家族の誰かが感染についての意識付けができていたと思うのです。例えば「帰ってきたら手を洗え」とか「口ゆすいだ?」などの声かけですね。しかし現代では、核家族で両親は共働きであることが多く、子どもの感染対策・教育まで目が行き届いていないかもしれないという危機感があります。トイレ掃除や枕カバーの洗濯、布団は週に1回は干して日光に当てるとか、昔はどの家庭でも当たり前にやっていたことが、家族で共有できていないケースもあるのではないでしょうか。そこで、核家族でも独居でも感染症予防の意識付けができるようなコンテンツを提供したいと考えました。無理に押しつけるような形ではなくて、分かりやすくて楽しい形で普及させたいですね。

――まさに「ざいたくま」スタンプはそのようなツールですね。ところで部会の目的が「要支援・要介護者と家族」と限定されているのはなぜでしょうか。

小原:要支援・要介護者は「健康弱者」なので、まずはここに焦点を絞って考えていくことにしました。また、日本は超高齢社会ですから、家族や親戚のなかに誰かしら要支援・要介護者がいる/いるようになるはずです。そこで「要支援・要介護者と家族」とすることで、自ずと一般の方も含まれていくと思っています。

――なるほど。限定しているように見えても、実は広い範囲が含まれるのですね。

小原:もちろん、がんなどの病気を抱えて自宅療養している方も含まれます。いま日本には、年間新規で100万人の方が何らかのがんに罹患しています。その中で、約3割がいわゆる抗がん剤による治療を受けています。入院して治療を受ける方は年々減少しており現在は8割近くが外来にてがん治療を受けています。ここには薬剤の開発などを含めた多くの先進医療の発展が関わっています。入院時には専門職がおりますので感染症や副作用対策も万全ですよね。感染症予防について「受け身」でよかったのです。でも、家でケアするとなると、自分で予防法を考えないといけません。どのマスクがいい?うがい薬はどれを選ぶ?手洗い用品は?自宅の環境は?吐いたときの片づけは?……等々、家で安心して暮らすための対策を自らする必要があります。その反面、在宅の環境を整えるための提案や指針を出すなどの対策は遅れていて、悲観的にみると野ざらしになっています。この点を在宅感染症予防部会でサポートしていきたいと考えています。

在宅感染症予防部会はヘルスケア協会内のハブとなり得る

――在宅感染症予防部会が日本ヘルスケア協会内にあることの意義は何でしょうか。

小原:感染症予防を考えるときは、その背景まで視野を広げる必要があります。例えば、どんなに衛生状態に気を配っても、免疫の低下や低栄養等、感染症になりやすい背景があります。ですから、食べることも、笑ったり楽しむことも広義の感染予防に繋がります。日本ヘルスケア協会には、栄養や食品をテーマにした部会があるので、そちらとの親和性は高いと思います。また、排泄ケア、ペットなど、一見関係なさそうなテーマとのつながりも見えてきます。在宅感染症予防部会は他の部会とつながってシナジー効果を生み出す、ハブ(中核)のような役割を担えるのではないかと考えています。

【聞き手・まとめ:田中留奈(伝わるメディカル)、企画・製作:株式会社リッチメディア】