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JAHIは、超高齢社会における健康寿命延伸とヘルスケア産業育成の実現を目指す、ヘルスケアに関する有識者、産業、関係者が集まった民間唯一の団体です。

生活は「創発」だ!③今後のヘルスケア産業のありかた

お客さんは神様じゃない

――上原先生は、ヘルスケア産業は今後どうなるとお考えでしょうか。

上原:ヘルスケア産業は今後、業種・業態を超えたネットワークによる経営がメインになっていくのではないでしょうか。生活のサポートを担うわけですから、1企業が取り扱っている品目だけでは需要を満たせません。企業それぞれが自分の得意なビジネスを自律的に営みながら、複数の企業と組んでネットワークを形成し、消費者に幅広いソリューションを供給していくことになるでしょう。

ヘルスケア産業の将来を担うリーダーは2つのパターンが考えられます。1つは専門的知識を持つ機関。医師を中心として地域の医療や介護をネットワークしていくのが一例です。もう1つは顧客との接点を持つ機関です。例えばドラッグチェーンですね。仕入れを多様化しつつ経営を効率化し、お客さんを組織化して多くの選択肢を提供していく、そういう形ができつつあります。

こういったビジネス環境においては、必ずしもリーダーにならなくてもいいのです。ネットワークに入って資源を共有し、お互いの実践力を大切にしていけば、一定の利益は確保できるはずですから。

――売り手と買い手の関係も変わっていくのでしょうか。

上原: 一般的に「お客様は神様」だとか「おもてなしの相手」だとか言われますけども、それは真実ではないと思います。これからは両者で機能分担をする形が望ましいのではないでしょうか。

例えば、家具屋。お店で売られている家具、これが価値を発揮するためには、消費者が使える状態にしないといけません。伝統的な家具屋は、配送して家に据え付けるまでをサービスにしていますが、近年の家具屋は組み立てる前の状態で売って、消費者が組み立てますよね。つまり、消費者に手伝ってもらう。こう見ると顧客は神様ではなく、協働者と捉えることができます。

このことはヘルスケア産業でも当てはまるのです。薬は売っただけでは価値が出なくて、きちんと用法・用量を守って飲んでもらうことが必要でしょう。この場合も顧客は協働者でないといけない。こういう意味でも、セルフメディケーションの概念を普及させるのは極めて重要なことです。

ネットで情報提供し、実店舗で相談対応

――セルフメディケーションの普及には、情報提供が必要ですね。

上原:そうですね。薬をどう使っていいか分からないと、セルフメディケーションはできません。店舗の薬剤師などに質問することはできますが、事前情報がないと質問もできない。ですから、まずはインターネットで消費者に情報を与え、分からないことがあればお店で聞く、というような流れが望ましいと思います。人間は情報をもらうほど知りたくなるものですから(情報の相乗効果)、その流れを創れた機関が繁栄します。

売り手の情報を買い手に移転し、情報格差をなくしていくことが大事です。今までの医療は、情報を移転しようとしていなかった。セルフメディケーションを謳ったとしてもあまり反応がないとしたら、理由はその辺にあります。こういった現状を破壊していくのが今後のヘルスケア産業かもしれません。相手の持っている情報量に合わせて、情報を与えていく。そうすれば顧客の知識が高まり、質問などを通じた協働作業でお互いの知識や技術が上がっていく。そういった方向の研究を日本ヘルスケア学会でやっていきたいと思います。

――この記事も、その情報提供の一つとなれば幸いです。本日は貴重なお話をありがとうございました。

【聞き手・まとめ:田中留奈(伝わるメディカル)、企画・製作:株式会社リッチメディア】