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JAHIは、超高齢社会における健康寿命延伸とヘルスケア産業育成の実現を目指す、ヘルスケアに関する有識者、産業、関係者が集まった民間唯一の団体です。

生活は「創発」だ!②健康とは「偶然を楽しむための力」

健康になるために「難しい本」を読め

――上原先生にとって「健康」とは何でしょうか。

上原:前回お話しした通り、人間が持つ生命力や生活力は「偶然を必然化していく力」と言えます。偶然を取り入れて創発するためには健康でなければいけません。

若いときはスピードスケートやアイスホッケーをしていましたが、74歳になる今は、いくつか大病したこともあり、運動はしていません。ただ、頭の訓練はしています。一番いいのは、夜になるべく難しい専門外の本を読むことです。「難しい」というのがポイントです。易しい本や感動するような本はダメですよ。

――それはどうしてでしょう?

上原:易しい本は内容が直ぐに頭の中に入っちゃうから徹夜して読んでしまうでしょう。そうではなくて難解な本なら、読むとすぐ眠くなりますから。健康のために難しい本を読んで早く寝ましょう。よく眠れますから。

――なるほど、睡眠導入剤としての読書ですね。

上原:眠くなったらそこで栞を挟んで、翌日にまたその続きを読めばいい。分からなければどんどん飛ばせばいいんです。でも、しばらくすると読めたような気がして何か1つは得られます。適当なところで完成させたつもりになることも人生には必要なのかもしれません。私は1か月に5~6冊くらい目を通していますね。皆さまはぜひ、私が書いた難しい本を読んでください(笑)。

生活をつくるセルフメディケーションとヘルスケア

――では、上原先生にとって「ヘルスケア」とは何でしょうか。

上原:ヘルスケアは、人々が健康でより良い生活を送るためのものです。「健全な精神は健全な肉体に宿る」という有名な言葉があります。これは古代ローマの詩人の言葉を元にして広まったものですが、本当の意味は、健全な精神と肉体の2つが合わさっているのが最高の価値であるということです。それを実現するためにあるのがヘルスケアだと考えています。

健康と言っても2種類あって、1つはゼロからプラスへと変化するwell-being(ウェルビーイング;身体的、精神的、社会的に良好な状態)。もう1つはマイナスからゼロへ戻すrecovery from diseases(リカバリーフロムディジーズ;不快感や病気からの回復)があります。

いずれにしても、まずは一人ひとりがセルフメディケーションをする、すなわち自分が弱ったときに自分自身で手当てをすることが前提にあって、それでは治らない場合は病院などの専門的なヘルスケアを受けるというのが基本です。

――健康は専門家から一方的に得るものではなくて、まずは自らの努力や対処があってこそ、ということですね。

上原:そうです。個人によるセルフメディケーションと専門的なヘルスケアがお互いに協働関係をつくることによって健康を増進していくという関係性になります。セルフメディケーションの概念が薄いと、ヘルスケアの概念も理解しにくくなります。

こういったセルフメディケーションをサポートするためのビジネスが横断的に連なったのがヘルスケア産業です。しかも、これらは人間の生活そのものに関わりますから、ヘルスケア産業はより拡大・多角化していき、いずれ生活サポート産業になっていくと見ています。

例えば、最近のドラッグストアは薬品だけでなく、生活用品や酒、生鮮食品まで取り扱っているところも出てきているでしょう。一部のドラッグストアは、クリニックや高齢者施設までを含めて組織化していて、いわば「ゆりかごから墓場まで」生活をトータルにカバーしようとしている。こういった産業概念は今までありませんでした。

生活の質を上げていく。それがこれからのヘルスケア産業の役割です。その役割の中にはセルフメディケーションの促進も含まれています。偶然を楽しみながら健康に生きていくことをヘルスケア産業がサポートするような将来が望ましいですね。

【聞き手・まとめ:田中留奈(伝わるメディカル)、企画・製作:株式会社リッチメディア】