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JAHIは、超高齢社会における健康寿命延伸とヘルスケア産業育成の実現を目指す、ヘルスケアに関する有識者、産業、関係者が集まった民間唯一の団体です。

100年人生を支える健康づくり① 散歩で「体・心・頭」を活性化する

歳を取れば取るほど、健康のありがたみが身に沁みてきます。この連載では、ヘルスケアのエキスパートに健康観や予防法について伺っていきます。最初にご登場いただくのは、日本ヘルスケア協会の今西信幸会長です(全4回)。


<略歴>
今西信幸(いまにし・のぶゆき)
1970年東京薬科大学卒。1990年医学博士号取得(東京医科大学)。現在、日本ヘルスケア協会会長、日本ヘルスケア学会会長、日本薬局学会理事長、東薬大附属ヘルスケア研究所理事長、東薬大附属社会医療研究所副理事長。

体・心・頭に良いことをしよう!

――今西先生が会長を務められている「日本ヘルスケア協会」はどんな団体ですか?

今西:一言でいえば、人生100年時代に向けて、人々が健康な生活を維持することができるよう、必要な条件を研究・調査し、その実現のために産業界、団体、学会、行政等と一丸となって行動する組織です(詳しくはこちら)。

――100年にわたり健康に生活するためには、社会の基盤整備に加えて、個人の行動や心構えも大切ですよね。今西会長はヘルスケアや予防についてどうお考えでしょうか?

今西:私は、「体・心・頭」にバランスよく刺激を与え、メンテナンスしながら生きていくのが、最も好ましい健康法だと考えています。考えてみてください。赤ん坊が生まれ、小学校に入り、立派な大人になるのは、大人になるための仕組みが社会に備わっているからです。すなわち、給食や体育で体をつくり、美術や音楽で心を養い、勉強で頭を使う。体・心・頭それぞれを成長させるシステムが用意されているのです。大人になっても、健康に生きていくためには体・心・頭のすべてに着目する必要があります。

――大人になったら、自分自身で体・心・頭を養っていかないといけませんね。

今西:そうです。各々の置かれた状況に応じて、体・心・頭にうまく刺激を与えられるように工夫して生活していくことが、本当の意味での健康法だと言えます。歳を取るというのは楽しいことですよ。自分の生き方を確立して、人生を楽しく過ごせるようになれば最高です。

散歩で体・心・頭に刺激を与える

――そのような考えをお持ちの今西会長ご自身は、実際どのように健康に気遣っているのでしょうか?

今西:体に良いことの原則は、適度な運動とバランスの良い食事、そして良質な睡眠を取ることです。これを踏まえたうえで、私は仕事帰りに歩くようにしています。最寄り駅の3つ前で降りると、家までだいたい45分ほどとなり、私にとってちょうどいい距離です。歩くのは天気が良く、時間的に余裕がある日だけなので、週に1回かそれ以上というペースですが、これが非常にいい。頭が刺激されて良いアイデアが出るし、自然からの学びがあって心も洗われていくのです。

――帰宅時の散歩が、体だけでなく心や頭にも良い影響をもたらすのですね。

今西:そうです。散歩というのはスポーツなどと違って、頭を使わなくてもできますから、考え事に適していると思います。季節の流れとともに移ろいゆく景色を見ることで、心穏やかになり、そのときに一番いいアイデアが出るのです。若い頃は花の色や鳥の声などに心を向ける余裕がなく、常に目の前のことに一生懸命になり過ぎて、視野が狭くなっていたと思います。今は周りをみる余裕ができ、より良いアイデアが浮かぶようになりました。

――なるほど。先ほど「歳を取るというのは楽しい」とおっしゃった理由が分かったような気がします。

今西:この散歩で得たものがもう一つあって、それは「できること」と「できないこと」を仕分けられるようになったことです。私はそれを自然から教えてもらいました。例えば、白鷺が川に飛んできてザリガニを食べますけども、ザリガニは食べられるために生まれてきたわけではないでしょう。でも、きれいな白鷺を維持するためには必要なことです。そこから考えると、大きな流れのなかでは、どう足掻いたってしょうがないこともある。考えてもしょうがないことは考えない。そんな切り分けがうまくできるようになりました。

――若いうちは、努力すれば何でもできると思ってしまいがちですよね。

今西:客観的な事実を受け入れないまま、前へ進もうと努力できるのが若者の長所でもあり短所でもあります。ただ、いずれ自分にとって都合の悪いことも受け入れないといけない。年齢を重ねて、できることとできないことの見分けが付くようになると、無駄な努力をしなくてすむのでロスが減ってきます。

――散歩というありふれた話が、ここまで深まるとは。

今西:まだありますよ。先ほどの例に挙げたザリガニのことですが、白鷺に食べられて不幸なのでしょうか? 必ずしもそうではないでしょう。我々は皆、いつかは死ぬ。その一方で子どもたちが成長していくわけです。私が消えていくからこそ、子どもたちが生きていける。だからこそ次世代に教育をして、大切なことを伝えようとする。自然に学べば、死を恐れる心も薄れてくるのではないかと思います。

――ありがとうございました。次回は「心」の健康法についてお伺いします。

100年人生を支える健康づくり② 情けは人の為ならず
100年人生を支える健康づくり③ 頭の若さを保つ「本気の趣味」
100年人生を支える健康づくり④ 日本ヘルスケア協会の取り組み

【聞き手・まとめ:田中留奈(伝わるメディカル)、企画・製作:株式会社リッチメディア】